対人緊張のカウンセリング
30年間、ずっと見てきたこと
カウンセラーとして独立して30年。正直に言うと、開業当初は自分にできるのか不安でした。でも今、確信を持って言えます。人は変われる、って。
ここでご紹介する事例は、プライバシー保護のため複数の相談者の体験をもとに構成しています。特定の個人のお話ではありませんので、ご了承ください。
28歳の女性、Aさんのことは今でも鮮明に覚えています。初回のカウンセリング、彼女は椅子に座るなり泣き出してしまって。「友達からランチに誘われても、怖くて怖くて。心臓がバクバクして、結局『予定があって…』って嘘ついて断っちゃうんです。で、夜中まで自分を責めて」
ああ、この苦しみ、何人も見てきたな、と思いました。予期不安っていうんですけど、まだ起きてもいないことを心配しすぎてしまう。それで最悪のシナリオばかり想像してしまう。日本の調査では、過去1年間に対人緊張の症状を経験した人は約0.8%、125人に1人という数字が出ています。「え、意外と少ない?」って思うかもしれません。
でもね、これは氷山の一角なんです。病院やカウンセリングに来る人だけの数字。実際には、「これくらいで相談していいのかな」「ただ内気なだけかも」って一人で抱え込んでいる人が、もっともっと多いはず。
面白いことに、アメリカでは約14人に1人という調査結果が出ているんです。日本人とアメリカ人で脳の作りが違うわけじゃない。じゃあ何が違うのか。それは「これは悩みとして相談していいんだ」っていう認識の違いなんですよね。
日本では「恥ずかしがり屋」「内気な性格」で片付けられてしまいがち。でも本当は、日常生活に支障が出るほど苦しんでいる。それなのに、「性格だから仕方ない」って諦めてしまう人が多い。
だから数字は少なくても、あなたは一人じゃない。見えないだけで、同じように悩んでいる人はたくさんいるんです。
私たちが一緒にやったこと
まずは考え方のクセに気づくところから
Aさんと最初にやったのは、思考を紙に書き出すことでした。友達から誘われた時、頭の中で何が起きてるのか。書いてもらったら、「絶対に会話続かない」「沈黙になったら最悪」って、極端な言葉ばかりで。
私は聞きました。「本当に?今まで一度も会話が続いたことないの?」って。そしたら彼女、ハッとした顔して「あ…職場では普通に話せてます。美容院でも楽しく話せたかも」って。
そうなんです。人間の脳って、不安な時は悪いことばかり思い出すようにできてる。だから、一緒に「もっと現実的な見方」を探していくんです。無理にポジティブにならなくていい。ただ、「会話が途切れても、相手はそんなに気にしてないかもしれないよね」って、そういう可能性に気づいていく。
これ、繰り返すと脳の回路が本当に変わっていくんですよ。神経可塑性っていうんですけど、何歳からでも脳は変われる。
体の緊張、これが意外と大事
Aさん、緊張すると肩がガチガチになって呼吸が浅くなるタイプでした。これ、自律神経の問題なんですけど、不安になると体が「戦うか逃げるか」モードになっちゃうんです。
で、教えたのが478呼吸法。4秒吸って、7秒止めて、8秒かけて吐く。最初Aさん「こんなので変わります?」って半信半疑でした。でも毎朝5分続けてもらったら、2週間後には「なんか、朝の電車で感じてた不安が減った気がします」って。
人と会う前にトイレで深呼吸するだけで、全然違うんです。「自分で不安をコントロールできる」って実感が持てると、それだけで自信になる。
イメージの力って、馬鹿にできない
これ、最初は皆さん「え?想像するだけ?」って思うんですけど。目を閉じて、カフェで友達と笑顔で話してる自分を、できるだけリアルに思い描いてもらうんです。コーヒーの香りとか、友達の笑い声とか、窓から入る光とか。
脳って面白くて、「実際の体験」と「鮮明なイメージ」の区別があんまりつかないんです。だから繰り返すと、実際の場面でも同じように振る舞いやすくなる。
Aさんには週2回、少しずつ難易度を上げながら練習してもらいました。最初は「カウンセラーと雑談」から。で、「家族とお茶」「友達一人とランチ」って段階を踏んで。焦らないことが大事なんです。
あの日のこと
3ヶ月経った頃でした。Aさんが「先生、親友から誘いが来たんです」って。いつもなら即断るところを、深呼吸して「行ってみます」って返信したって。
当日、私もドキドキしてました。次のセッションでどんな報告が聞けるんだろうって。
そしたら彼女、満面の笑みで来たんです。「行けました!会話が途切れたこともあったけど、友達は全然気にしてなくて。『久しぶりだから何話そうか迷っちゃうね』って笑ってて。帰り道、『楽しかった』って心から思えたんです。何年ぶりだろう…」
正直、私も泣きそうになりました。
半年後、Aさんは会社の食事会にも参加できるようになりました。完璧じゃないですよ。今も緊張はする。でも「緊張しながらでも参加できる自分」を受け入れられるようになった。それが一番大きな変化だと思うんです。
あなたに伝えたいこと
対人緊張って、性格の問題じゃないんです。脳が不安を感じやすくなってるだけ。で、それは変えられる。軽度から中等度なら、カウンセリングだけで十分改善可能です。もちろん、必要なら薬も担当医師と相談しながら併用できます。
変化って劇的じゃないです。ほんと、小さな小さな一歩の積み重ね。でもその一歩を、一人で踏み出すのは怖いですよね。だから私たちがいる。
もしあなたが今、友達の誘いを断り続けてるなら。夜中に自分を責めてるなら。一度、カウンセリング試してみませんか?
あなたが思ってる以上に、明るい未来が待ってるかもしれない。最初の一歩は勇気がいるけど、その一歩があなたの人生を変える始まりになるかもしれない。
私たちは、あなたの勇気を全力で支えます。本当に。

